近年、働き方改革として残業削減や副業解禁など、新しい働き方を許容する雰囲気が出てきていますよね。しかし、労働時間をただ削減する働き方改革では、生産性向上がともなわないと企業が立ち行かなくなります。

それでも、世間的には働き方改革は推進すべきことされ、企業はいっそうの労働条件の改善を義務づけられるのが現状。企業にとっては労働時間の削減と生産性向上の両方を実現せねばならないのっぴきならない状況です。働き方改革と生産性向上をなんとか両立できる方法を探している方もいるでしょう。

そこで、今回は働き方改革と生産性向上させるにはどうすれば良いのか、についてお伝えします。働き方改革の基本を押さえ、先行企業の事例も見てせひ参考にしましょう。

 

働き方改革とは

働き方改革のイメージ

働き方改革とは、2016年に策定された政府の経済対策の一つ。この背景としては、少子高齢化が進み働き手が今後不足するから、と考えられているためです。

日本の15歳~64歳の生産年齢人口は1997年の約8,700万人がピークで、2016年には7700万人以下になりました。しかも少子高齢化が進んだ結果、減少率のカーブは年々きつくなっています。そこで政府としては国内の労働力確保に向け、「一億総活躍社会」との掛け声のもと、労働参加率を上げて対応しよう試みています。

政府は労働参加率の向上を目的に、以下の3つを柱とする政策を実現すべく法律や制度を整備しています。

  • 長時間労働の是正(残業時間の削減)
  • 多様で柔軟な働き方の実現(テレワーク、フレックスタイム、時短勤務)
  • 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)

これらは従来の日本企業の風土とは異なるリベラルな政策のように見えますが、労働力を確保するには必要です。できるだけ多くの人々に労働参加してもらうには、勤務時間を含めた職場や労働環境の改善、また多様な働き方を徐々に受け入れていかなくてはなりません。

また正規・非正規の区分なく能力のある人を評価・登用していかねば、働き方改革と生産性向上の両立は難しくなるでしょう職能でなく契約形態で評価すると、有能な非正規社員が流出し生産性が落ちてしまうためです

なぜ今、企業が働き方改革をする必要があるのか

人材不足のイメージ

働き方改革は国の重点政策の一つです。特に残業時間の上限規制は「労働基準法」制定後初の大改革とされ、大きな変革の流れにあることは間違いありません。ただ、企業はなぜ今、働き方改革に関わっていかねばならないのでしょうか。それについて、解説しましょう。

働き方改革をする理由は、生産性をあげるためです。2018年に働き方改革に関わる一連の労働関連法令の改正等が成立し、2019年4月から順次施行される運びになっているのは周知のとおりですよね。法令遵守はもちろんなのですが、働き方改革に沿うかたちで会社の制度を整備し、さらに競争力を保持できなければ企業の存続すら危うくなるでしょう。

なぜなら、国全体を覆う慢性的な人材不足は、どんなに勢いのある企業でもいずれ巻き込まれてしまう可能性があります。優秀な人材をめぐる争奪戦は熾烈になり、採用市場の激変に直面してから対応を考えるのでは遅すぎる可能性があります。将来を見据えて社内の労働環境や体制を整え、来たるべき時に備えましょう。

 

働き方改革で生産性を向上させる方法

デジタルのイメージ

国の働き方改革では労働参加率を向上させるため、労働時間の短縮と労働条件改善の施策を講じています。しかし、業務時間の削減や労働条件緩和により、今までのような仕事のやり方では業績が落ちてしまいかねませんよね。

企業の働き方改革でも生産性向上を担保するには、生産資源の最適配置、デジタルツールへの代替が有用でしょう。実際に働き方改革を先行実施した企業の事例をみると、以下のような対応が行われています。

  • 業務体制の整備
  • デジタル導入による効率化
  • 繁閑に合わせた勤務体制
  • 時間や場所にとらわれない勤務環境

まとめると、IT活用による情報共有とチーム対応、フレックスタイムなど柔軟な勤務時間体制の導入、流動的なワークスペースの採用により、従業員のワークライフバランスと生産性向上の両立を実現しているとのこと。今までの固定的で硬直的な働き方から、ITの活用とチームの移行、人員と時間をやりくりして無理なく働ける体制づくりが一定の成果を上げています。

 

働き方改革で生産性を向上させた事例

企業のイメージ

それでは、実際に働き方改革と生産性向上の両立を果たした先行企業の事例を紹介しましょう。

休暇取得率と業績アップを両立させた事務ソリューション会社

福井キヤノン事務機株式会社(社員数60名)はITシステムの活用と勤務制度改革によって、働き方改革と生産性向上を成し遂げました。2015年くらいからの3年間において、時間外労働の10%削減と、独自の休暇制度の取得率100%を達成しつつ、3期連続して増収増益を達成しています。

同社での取り組みの概要は以下のとおりです。

  • ITシステムによる業務環境の構築
    • iPadによるレポート作成の効率化:全社で10時間/日の時間削減
    • 電子承認システム採用 :印刷コスト(約6万円/年)削減
    • 受発注業務のIT化による効率化 :非能率な処理プロセスとミスを撲滅
  • 多様な休暇制度と勤務制度の創設
    • 独自の特別休暇制度 :全社員対象の休暇と、傷病・介護・育児の特別休暇
    • 柔軟な勤務制度の採用 :就業時間の2時間繰上げ・繰下げ

業績好調な企業だからこそ打てる施策も含むものの、基本的にITによる非効率な業務プロセスの統合・効率化により生産性を上げています。冬場の悪天候や事故など出勤事情への配慮、前日の長時間勤務でも体をちゃんと休めてから就業できる体制があれば働く人も安心ですよね。

IT活用、制度改革で所定外労働時間を削減したリフォーム・不動産会社

株式会社安藤嘉助商店(社員数49名)は業務のデジタル化とオンライン移行、業務体制の変革により働き方改革と生産性向上の両立を果たしました。

同社における働き方改革の概要は以下のとおりです。

  • 移動時間と所定外労働時間の削減
    • 汎用のITインフラを活用:移動、資料受渡し、印刷にかかる時間を削減
    • 数人のチーム制を導入 :メイン担当者が休暇で不在でも対応可能に
    • 店舗の完全休業日を設定:全従業員の休日取得を確保
  • 柔軟な勤務制度の創設
    • 通勤困難者用のテレワーク:婚姻にともなう転居、出産前でも勤務を可能に

同社は複数の店舗を構える不動産関係会社です。現場や取引先での直接のやり取りから、オンラインに移行することで、所定外労働時間を一人当たり月20時間削減できています。具体的には社内と取引先がともにタブレットとクラウド、オンラインを活用しているとのこと。ITの適切な活用は、企業の働き方改革にとって必要不可欠といえます。

また、全従業員の休暇確保のため勤務体制を改善したり、離職防止のテレワークも導入したりしています。質の良い人材確保のためには勤務条件の改善もカギでしょう。

働き方改革と生産性向上の両立にはRPAやDXが有効

DXのイメージ

長時間勤務をなくす働き方改革と生産性向上の両立には、業の効率化だけでなく、複数での業務対応、それにともなう情報共有が欠かせません。それには各種のITツールの活用が必要です。

例として、RPAによる事務の自動化と効率化、またグループウェアは職場に不在の従業員と情報共有をしたり進捗管理もできます。これはすなわち、今までの仕事のやり方をデジタル化していく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。

働き方改革と生産性向上の両立には、ツール選定の良し悪しだけでなく、その組み合わせや構成も重要になってきます。ITツール導入の検討にあたって、他社の事例を参考にしたり、ITに強い業務コンサルタントに相談しましょう。

まとめ

さて、今回は働き方改革と生産性向上についてお伝えしました。

働き方改革とは政府の経済政策の一つで、国内の労働人口減少にともなう労働力不足対策として策定されました。

【働き方改革の3つの柱】

  • 長時間労働の是正
  • 多様で柔軟な働き方
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

日本の労働人口の減少率は著しく、人材市場のひっ迫は明らかです。企業は将来を見すえ、社内環境や体制を整備することが求められています。

【働き方改革と生産性向上の両立手段】

  • 業務体制の整備 :チーム対応
  • デジタル導入による効率化 :情報共有、既存業務のデジタル対応
  • 柔軟な勤務体制 :フレックスタイム制、事情を勘案した勤務時間
  • 流動的な勤務環境 :テレワーク、デスクのフリーアドレス化など

勤務時間や働く場を柔軟に設け、ITツールをうまく活用することで、長時間勤務の抑止や離職防止、繁閑差の吸収など、無理のない働き方改革と生産性向上がかないます。

労働時間削減だけでは、企業にとっては真の働き方改革とはいえませんよね。働きやすい職場というだけでなく、成長性や将来性のある会社だからこそ、みんなに働きがいのある職場として認めてもらえるに違いありません。仕事にかけられる時間を減らしても、ITツールの活用やチーム対応でうまく乗り切っていきましょう。